山形県米沢市。雪深いこの土地は、江戸時代から織物の一大産地として全国に知られて来ました。

その大きな特長は、数々のバラエティ豊かな織りの布を生み出していること。普通の産地は、例えば結城なら結城紬、博多なら博多織と、“一つの産地に一つの布”が一般的ですが、米沢には、紅花紬、米琉紬、紙布帯、袴、御召、男物きもの…と個性的な布が目白押しです。
そんな米沢が、今年のサローネでショーを開催。「ファッションSHOW米沢織」と題し、12の工房が最新作をファッションショー形式で披露します。一体どんな織物が見られるのか、その特長をご紹介します。

「きものサローネで出会える“布”を訪ねて」コラムでは、サローネ出展のきもの産地について、豆知識をまとめます。第2回目は、米沢織。ここを読んでからゼヒ当日会場へ、実物に出会いに来てください!(監修・写真提供:粟野商事)

紅花紬

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米沢の布で、近年一番有名なのがこの紅花紬。名前の通り紅花の染料で染めた糸で織る絹織物です。
江戸時代、山形地方では、女性の口紅や頬紅の原料として、紅花の栽培が盛んに行われていました。明治以降は廃れてしまったこの紅花を、昭和中期に復活させたのが、「新田」。明治期創業の米沢の老舗織り元です。

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まだ朝露のしたたる早朝、一面の紅花畑から摘み取る黄色の花びら。この花びらから、独特の紅色やピンク色が生まれます。「新田」の紅花紬は、たちまちのうちに全国のきもの愛好家の憧れの一枚となりました。
サローネ「ファッションSHOW米沢織」には、その「新田」の紅花紬が登場。植物染料ならではの柔らかく澄んだ美しい色合いをじっくりとご覧ください。

紙布帯(しふおび)

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「紙布(しふ)」とは、和紙の糸を用いて織る布のこと。紙の糸を使っているため独特の張りがあって帯にすると形が作りやすく、八寸なごや帯に織られています。
紙布はもともと、江戸時代、仙台藩で不要になった大福帳を糸にして織っていたもの。謂わば江戸時代のリサイクルだったこの糸を、近年、米沢の糸商が機屋(はたや)に提案。同じ米沢の「近賢織物」などが、その素材感の面白さに目をつけて紙布帯へと織り始めました。
そう、紙布は、糸屋も機屋も同市内にある、米沢ならではのコラボレーションが生んだ布なのです。「ファッションSHOW米沢織」には、その最新作が登場します。

米沢袴

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あまり知られていませんが、現在、絹袴の実に95%は米沢で織られています。縞柄のすっきりと美しい袴姿は、日本男児の美学そのもの。「ファッションSHOW米沢織」には「東匠猪俣」の袴が登場します。

米琉紬(よねりゅうつむぎ)

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「米琉」とは、「米沢」と「琉球」の一文字ずつから取った名。“米沢で織られる琉球絣風の紬”という意味で、鳥や井桁模様など琉球風の模様を絣で織り出し、明治後期から大正にかけて、全国で大きな流行となりました。
その後途絶えてしまっていた米琉ですが、近年、過去の米琉をアレンジした現代米琉が織られています。明治大正期に人気の高かった独特の茶色を地の色に、「小口(こぐち)」と呼ばれる柄のにじみに独特の赤が出ているところも、当時と同様。
「ファッションSHOW米沢織」では、明治大正期の米琉スタイルと、現代の米琉が登場。90年の時を経て受け継がれたもの、変化したもの、その変遷をお楽しみください。

御召(おめし)

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御召とは、もともと緯糸(よこいと)に強い撚りをかけた糸を用い、独特のシボを立たせた絹織物のこと。現在ではジャカード織機という機械を使って多彩な地紋を織り上げた、紋御召も織られています。
京都や桐生と並び、米沢も御召の一大産地。「ファッションSHOW米沢織」にも「佐志め織物」の紋御召が登場します。

おしゃれコート

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秋から冬にかけて、こだわりたいのがコートのおしゃれ。米沢ではこれまでのきものコートとは一線を画した、凝った織物のコート反物を数々揃えています。
「ファッションSHOW米沢織」には「佐志め織物」製のコートが登場。こだわりのコートにぜひご注目ください。

草木染め紬

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冒頭で紅花染めのご紹介をしましたが、米沢では、紅花以外の植物で染めた紬もたくさん織られています。
「ファッションSHOW米沢織」には、「野々花染工房」「新田」「季織苑工房」「斎英織物」の草木染めが登場。使われている植物は、茜、藍、桜、栗のいが、紫草、槐樹、五倍子など、ヴァラエティ豊か。華やかでありながら落ち着きをたたえた、草木染めならではの美しさをじっくり確認してみて下さい。

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「季織苑工房」の茜染めと紫根染めの草木染め帯は、独特の絞り染め模様が見どころです!

男きものは展示ブースも!

この数年、じわじわと人気が高まっている男性きもの。米沢はその男性きものの主力産地の一つです。特に今年のサローネでは、「きものマルシェ」会場に「ベルカッシオwith季織苑工房」ブランドが出店。男物コートの最新作を中心に、男性きもののおしゃれをスタイル提案します。
これからきものを始めようという男子の皆さん、ゼヒおしゃれの参考に遊びに来て下さい。もちろん「ファッションSHOW米沢織」にも男子きものコーディネイトが登場します。

織りの町、米沢

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最後に、米沢織の歴史を少し。
米沢を織物の地へと育てたのは、江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山(うえすぎようざん)公。キャロライン・ケネディアメリカ大使が「父が尊敬していた政治家」と発言して話題になった大名です。父とは、もちろんケネディ大統領のことですね。
鷹山公は、窮乏していた藩の財政立て直しのために、麻織物から絹織物へと生産を転換。この絹織物が全国に流通して人気を博し、現在まで続く米沢の基礎が作られたのです。藩の立て直しに成功した鷹山公は今でも米沢の人々に深く敬愛され、上杉神社は市民の心の拠り所となっています。

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そして、このような歴史を持つ米沢織は、多くの場合、武士が担っていたことが大きな特長です。普通、紬と言うと農家や商家で織られるものですが、米沢では鷹山公の号令の元、武士が積極的に家内で織り物に励みました。
こうした藩を挙げての取り組みの伝統は綿々と引き継がれ、現在でも米沢では、市内の織り元同士が非常に仲良く、団結しています。これも米沢という産地の大きな特長と言って良いかも知れません。
例えば、冒頭でご紹介した紅花染めは「新田」が開発したものですが、その技術を隠すことなく市内の織り元に伝え、今では紅花染めは米沢全体の技術として発展しています。
また、紙布織りの項でご紹介した通り、織り元も糸商も市内に存在するのが米沢の強み。頻繁に交流し合うことで、新開発の糸を使った新しい布が生まれています。
鷹山公より280年。伝統を守りながら新しい織物を生み続ける米沢の、2015年最新作が登場。「ファッションSHOW米沢織」にゼヒご期待ください!

「ファッションSHOW米沢織」は、10月9日(金)12:30~13:00、COREDO室町1三井ホールにて開催。
米沢の男性きもの「ベルカッシオwith季織苑工房」は、10月7日(水)~9日(金)11:00~20:00、YUITO日本橋室町野村ビル「きものマルシェ」に出店します。

  • きものNightCOREDO室町1三井ホール 10/8(木)9(金)
  • 企画展「きもの100体スタイリズム」江戸桜通り地下歩道 10/8(木)~10(土)
  • きもの企画展&SHOWCOREDO室町1三井ホール 10/9(金)10(土)
  • きものマルシェYUITO日本橋室町野村ビル 10/7(水)~9(金)
  • オリジナル小型印サービス 10/7(水)~10(土)
  • 日本橋を愉しむ<きもの割引> 10/7(水)~10(土)
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  • サローネ出展者と出演者をもっと深く知るためのインタビュー&コラム