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「昨年のサローネでのショーより」

JOTARO SAITO――六本木ヒルズに旗艦店を構え、きものブランドとして唯一、東京コレクションに参加。きものだけの世界に閉じ込もり安穏とするのではなく、グローバルファッションの潮流に自らを位置づけるそのあり方は、まさに開拓者と言える存在です。

その「JOTARO SAITO」は、毎年きものサローネ「TOKYO KIMONO COLLECTION」で、全作オリジナルのミニコレクションを発表して来ました。3年目となる今年は、どんなコレクションが展開されるのか。そして、近年ではインテリアファブリックにも活動領域を広げる旺盛な創作意欲について、お話をおうかがいしました。

サローネ(以下、S)――まずはズバリ、今年のコレクションのテーマを教えてください。

斉藤上太郎(以下、斉藤)――今年のテーマは、「SUPER TIMELESS」を掲げます。時を超えて変わらないもの。スタンダードということについて、僕なりにもう一度見つめ直してみたことを作品に展開しています。

S――「JOTARO SAITO」と聞いてぱっと思い浮かぶのは、「スタンダード」や「伝統」という言葉よりはむしろ、「革新」だと思うんですね。その中で敢えて「スタンダード」に向き合っていることが意外に感じました。

斉藤――そもそもきものというもの自体が、「伝統」とか「スタンダード」なものと考えられていますよね。じゃあ、そのスタンダードをスタンダードにしている要素って何だろう?と思ったんです。

つまり、きもののどういうところが伝統的であり、スタンダードなんだろうということ。そうやって考えてみると、まず、きものの柄は、その大きな要素の一つになっていますよね。

S――確かに、きものには「青海波」柄とか「麻の葉」柄とか、数百年や千年の単位で受け継がれて来たデザインがありますものね。

斉藤――そう、まさにスタンダードですよね。それから、模様だけではなく、染めや織りの技法にも何百年と受け継がれて来たものがあるし、着方にも約束事がある。そういう何もかもをひっくるめて、「これが今のきもののスタンダードです」と言われているものがある訳だけど、それをもう一度考え直してみようということなんです。

S――非常に根本的なところに切り込んでいらっしゃいますね。

斉藤――はい。例えば“太めの格子柄”なんていうものは、もう、スタンダード中のスタンダードですよね。カジュアルの代名詞的な柄として、きものでは紬に使うとスタイルが決まっている。そういうあり方そのものをもう一度見つめ直してみようということなんです。例えばこの作品、部分になりますが、写真をお見せしますね。

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S――わあ、これは確かに格子柄ですが、新しい感覚がありますね。まず目立つのがこの黒とグレーの細かい格子柄ですが‥

斉藤――そう、その外側に、きもの全体として大きな黒い格子柄があって、細かい方の格子と入れ子のようなデザインになっているんです。

S――なるほど面白いですね。そして格子の上に乗ったこの洋花は‥刺繍ですか?

斉藤――刺繍です。普通、きものでは刺繍はフォーマル感を表すもので、紬には刺さない。そういうスタンダードがありますよね。そこをもう一度見つめ直すと、こういう使い方も出来るんだよということなんです。

S――カジュアルであるはずの格子柄に刺繡が乗ることで、新しいおめかし感が生まれています!素敵ですね。

斉藤――今回のコレクション全体が、一つ一つ、こういう試みの集合体になっているんです。今、スタンダードとされている柄や技法、それは本当にスタンダードなのか?この柄だからカジュアル、この技法はこういう素材に使う。そういう決めつけを一旦取っ払って、真っさらに見つめ直してみよう。その時最後に残る形や技法の原型のようなものが「TIMELESS」なんじゃないか、と。

S――なるほど。非常に哲学的で、そしてオリジナルな考え方ですね。コレクションを拝見するのがますます楽しみになって来ました。

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「10月10日ショーのインビテーションカード」

斉藤――実はもう一つ、今回のコレクション全体に大きなコンセプトを設定していて、それは「全作品、小紋」。小紋だけでコレクションを組んでいるんです。

S――そのこだわりにも何か理由がありそうですね。

斉藤――小紋は、あらたまったシーンではなく、友だちとビストロに行くといったような、カジュアルなシーンで着るものですよね。現代のライフスタイルの中で、一番着る機会が多いきものだと思います。

その小紋というステージの上で、先ほど言った、究極にTIMELESSなものを繰り広げる。きものの核となるような要素を日常的にまとってもらう。そういう実験をしようと思ったんです。

S――なるほど。考えてみればそれはすごく贅沢なことですよね。ふだん着るきものの中に、上太郎さんが考えに考え抜いた新しいTIMELESSのスタイルが展開されている訳ですから。

斉藤――そうなりますね。絶対面白いものになるから、期待して頂きたいですね。

S――本当に楽しみです!ところで、上太郎さんのコレクションでは、毎回、一つ一つのスタイルごとに、半衿、帯〆、帯揚げ、草履、総てトータルデザインされたオリジナルの小物が使われていますよね。今回ももちろんそうなりますか?

斉藤――もちろんです。例えばこれは、今回のコレクション用に準備している帯〆なのですが‥

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S――わあ!この中のどれかが先ほどの格子の小紋に乗ったりするのかな?と想像が膨らんでしまいます。

斉藤――京都の組紐商に、今回のコレクションに合わせたデザインを伝え、新しく組んでもらったものです。こちらは草履で、老舗の「岩佐」さんとコラボレーションしています。

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S――コレクションではついついきものや帯に目が行きがちですが、「JOTARO SAITO」の場合は小物にもしっかり目を配らなきゃいけないですね。30分という時間の中で忙しくなりますが(笑)。

斉藤――全身に見どころが仕掛けてありますので、注目して頂きたいですね。

S――それにしても、上太郎さんはきものデザイナーとして1996年、27歳でデビューされて、その時からこうして、小物までトータルのデザインをされて来たのですか?

斉藤――はい。きもの業界は今でも、きものはきもの、帯は帯と分けて制作することがほとんどですが、僕の場合は、父(きものデザイナー斉藤三才氏)の代から既にトータルでのスタイル提案をしていますからね。

S――上太郎さんの家は、確か上太郎さんで三代目になりますか。

斉藤――はい。昭和の初めに祖父の才三郎が染め師として独立したのが初代で、染め師は一代きりが多いから、京都でも三代続いている家はそんなにないんですよ。

S――そうなんですか。おじいさまにしろお父様にしろ、それぞれの時代に新しい試みをされて来て、その系譜の中に上太郎さんがいるということになりますね。

斉藤――そうなりますね。僕の代で東京コレクションに参加することを決めて、六本木ヒルズにきものブランドとして店を構えて。全部、きもの業界では異端児になりますが、洋服では普通にしていることですよね。

これだけみんなが洋服を着ている時代、きものだからと言って別世界に閉じこもるのではなく、洋服と同列に並んで勝負をして行く。それが僕の考え方です。

S――なるほど。更にこの10年ほどは、家具や壁に使われるインテリアファブリックも手掛けていらっしゃいますね。

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斉藤――はい。都内のデザイナーズホテルから依頼を受けたのがきっかけで、ペニンシュラ東京をはじめ、八芳園、リッツカールトン京都・東京などの高級ホテルのパブリックスペースやスイートルームの壁面、ソファなどのファブリックを手掛けています。

S――インテリアに和の要素を取り入れるという潮流はますます強くなっていますから、ご活躍の場は更に広がりそうですね。何しろ上太郎さんは和のデザインを知り尽くしていて、それを更に現代的なスタイルへと変換出来る存在ですものね。

斉藤――これまできものでやって来たことを、インテリアファブリックでも展開していることになりますね。

S――そんな上太郎さんがもう一度原点に帰るようにして生み出した今年の「SUPER TIMELESS」コレクション、本当に楽しみにしています。今日はありがとうございました。

斉藤――ゼヒご期待ください。

TOKYO KIMONO COLLECTION「JOTARO SAITO」ショーは、10月10日(土)17:00から、COREDO室町1‐5F、日本橋三井ホールにて開催します。

「JOTARO SAITO」のホームページはこちらから
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「JOTARO SAITO」Facebookページでも、日々の制作の様子をドキュメントしています
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  • きもの企画展&SHOWCOREDO室町1三井ホール 10/9(金)10(土)
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